帰り道 デートの帰り道に読む
デート

デートで緊張して、何も喉を通らなかった

初デートで緊張しすぎて、頼んだパスタをほとんど食べられなかった。フォークで同じ麺をぐるぐる回しながら、一時間過ごした夜の話。緊張で食事が喉を通らない男の、実話。

初デートの相手は、パスタ屋を選んでくれた。

私は緊張で、そのパスタを、ほとんど食べられなかった。

フォークで同じ麺を、ぐるぐる回してた

注文したのはボロネーゼだった。運ばれてきたとき、相手は「おいしそう」と言って食べ始めた。私は、麺をフォークに巻きつけて、解いて、また巻きつけて、を繰り返していた。

食べようとすると、喉が詰まるような気がした。 一口口に入れて、飲み込むのに、時間がかかった。飲み込んだかどうかも、よく分からなかった。

食べられない自分と、食べてる相手

向こうは普通に食べてる。私は同じ量を、半分も進めていない。

それを見て、「食べるのが遅い」と思われてるんじゃないか、と考えると、ますます喉を通らなくなった。緊張で食べられない自分が恥ずかしくて、余計に緊張する。 悪循環だった。

あの夜、私はボロネーゼを半分残した。相手には「お腹いっぱいなんだ」と言った。本当は、一口ずつで精一杯だった。

緊張で食べられないのは、悪いことじゃなかった

あとから考えると、あの夜に無理して全部食べなくて、正解だったと思う。

食べるのは、次の機会にできた。でも、詰まった喉のまま、話を続けるのは、あの夜にしかできなかった。

相手は、私が緊張してることを、むしろ好意的に見てくれていた。帰り際に「緊張してたね」と言われて、「はい」と答えると、相手は笑った。あの笑顔が、救いだった。

で、今はこうしている

今は、初デートでは、最初から量を少なく頼むことにしている。

緊張で食べられないと分かってるから、頼む量を減らして、食べられなくても「食事を楽しめた」とまでは言わないけど、無理はしない。それと、緊張してることを、隠さない。

「こういうの、緊張するタイプなんです」と最初に言うと、意外と楽になる。緊張を隠してる間だけ、緊張は大きくなる。 口に出したら、小さくなった。

緊張で喉が通らなかった夜は、今もたまに思い出す。でも、あの夜のことは、恥ずかしい思い出ではなくなった。食べられなかったことより、緊張してる自分を隠さなかったことのほうが、大事だった。

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