「楽しいですね」しか言えなかった夜
デート中、私は「楽しいですね」「面白いですね」しか言えなかった。感想ばかり言って、自分のことは何も話さなかった夜の話。
「楽しいですね」
その日、私はこの言葉を何回言ったか分からない。相手が何を話しても、私は「楽しいですね」「面白いですね」「すごいですね」を返してた。
感想を言ってれば、会話になってると思ってた
悪い言い方じゃない。否定してないし、感想も言ってる。一見、ちゃんと会話してるように見える。
でも、あとで考えると、私はその晩、自分のことを何も話していなかった。
どこで育ったとか、何が好きとか、休みの日に何をしてるとか。全部「楽しいですね」の影に隠れて、一度も表に出なかった。
感想ばかりの夜の、終わり方
その夜、帰り際に相手がこう言った。
今日、楽しかったです。でも、あなたの話、一回も聞いてない気がします
正直、ドキッとした。私は「話してる」つもりだった。でも、それは「反応してる」だけだった。
相手は会話を求めていた。私は、相手が話すための窓口にしかなっていなかった。
感想は、会話の代わりにならない
感想は、相手の話を受け取った合図にはなる。でも、それだけだ。
感想を言ってる間、私は私のことを何も出していない。 出してないから、向こうは私のことを何も知らない。会っても、中身が透けて見える。
会話は、相手の話に相づちを打つことじゃない。私の話も出して、相手の話と混ぜていくことだった。
で、今はこうしている
今は、感想のあとに、必ず自分のことを一つ足すようにしている。
「楽しいですね。そういえば私も、前に◯◯で……」
たったこれだけ。でも、これを足すと、会話が「感想の交換」から「話の交換」になる。
「楽しいですね」で終わらせない。そのあとに、自分のことを一言。それだけを、今は練習してる。