話が途切れたとき、私は店員を呼んでいた
デートで会話が途切れそうになるのが怖くて、私は料理の説明を聞きに店員を呼んでいた。会話が続かない男が、沈黙から逃げることでなんとか繋いでいた話。
「こちらのお皿は、前菜からお召し上がりいただいて」
私は店員さんの説明が好きだった。理由は単純で、店員さんが来ると、会話の心配をしなくて済むから。
沈黙が怖くて、逃げていた
初デートのとき、私は二時間で店員を三回呼んだ。
料理の説明、水の追加、あと何品か確認。全部、わざとだ。沈黙が始まりそうになると、私は無意識に手を挙げていた。
あ、すみません。こちらのお皿は何ですか?
相手は「さっき説明してましたけど」と思っていたかもしれない。でもあのときは、止まらないと会話の責任が全部自分に来る気がして、怖かった。
逃げてる間、相手は何をしているか
今なら分かる。沈黙が怖いのは、私だけだった。
私は店員を呼んでる間、必死だった。でも相手は、わりと平気な顔で水を飲んでいた。あのとき相手が考えてたのは、たぶん「この人、変なタイミングで店員呼ぶな」くらいの話だ。
沈黙を埋めるのに必死すぎて、相手の表情を見る余裕がなかった。
会話が続かないのは、沈黙を埋める責任を自分が背負ってるから
沈黙が二秒続くと、私は「やばい、また空いた」と焦る。でも向こうから見たら、その二秒は何の問題もない。空いてる時間を「失敗」だと思ってるのは、話を繋ぐ責任を自分が負ってる人だけだ。
相手が話す番を待つ時間は、沈黙じゃなくて「相手のターン」だ。
で、今はこうしている
今は、あえて三秒待つ練習をしている。
相手が言い終わってから、一呼吸置く。そこで向こうが続けたら、それは向こうが話したい話だ。私が埋める必要はない。
店員を呼ぶ回数は、気づいたら減った。減ったぶん、相手の顔を見ている時間が増えた。
沈黙は、会話の終わりじゃない。向こうが話す番を、私が待ってる時間だ。
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