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デート

待ち合わせに、一時間早く着いた

初デートの待ち合わせに、私は一時間早く着いた。駅のコンビニで時間を潰して、トイレに三回行って、それでも時間が余った。早く着きすぎるのは、緊張の大きさを量る物差しになっている。

初デートの待ち合わせに、私は一時間早く着いた。

一時間は、長すぎた

待ち合わせは十四時。私は十三時に、駅の改札前にいた。

一時間前は、まだ誰もいない。改札を出てくる人の中に、相手がいるはずもない。それなのに、私はスマホを見ては顔を上げて、改札の方向を眺めていた。

早く着きすぎると、待つ時間が余計に長くなる。 私はその一時間、コンビニで時間を潰して、トイレに三回行って、鏡で前髪を直して、また改札に戻った。

早く着くのは、緊張の大きさ

どうして一時間も早く着いたのか、今なら分かる。

早く着くのは、待たせるのが怖いから。相手に「遅刻した」と思われるのが怖くて、その分だけ早くなる。 それは裏を返せば、どれだけ緊張してたかの物差しになっていた。

一時間早く着いた人間は、落ち着いてはいない。緊張で、じっとしていられなかった。待ち合わせの意味は「相手と会う時間」なのに、私は「相手を待たせない時間」だけを考えて、そこに張り付いていた。

早く着いた自分が、相手に見えた

十四時、相手が改札を出てきた。

私は「ちょうど今来た」を装った。コンビニの袋をコートの下に隠して、「こんにちは」と笑った。一時間前からいたことは、絶対に言えなかった。

相手は何も気づかず、「待った?」と聞いた。私は「いや、今来たばかり」と答えた。あのときの「今来たばかり」は、たぶん、私の一生で一番下手な嘘だった。

で、今はこうしている

今は、待ち合わせには十五分前に着くようにしている。

十五分は、余裕があって、でも待ち時間が苦にならない時間。早く着きすぎるのは、緊張を相手に見せているのと同じだと知ってから、私は「一時間前」をやめた。

そして、もし相手より早く着いたら、その時間を「待つ」んじゃなく、深呼吸をする時間にすることにしている。コンビニに隠れて時間を潰すんじゃなく、改札の前で、空を見て、呼吸を整える。

一時間早く着いた日、私は緊張の分だけ、相手に近づけなかった。待ち合わせに早く着くのは、悪いことじゃない。でも、一時間前から張り付いている私は、まだ、会う準備ができていなかった。

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