帰り道 デートの帰り道に読む
見た目

服を「太って見えない」で選んでいた、十年間

私は十年間、服を「痩せて見えるかどうか」だけで選んでいた。黒い服ばかり買って、鏡の前で体型を隠すことに成功して、その代わりに何を失ったか。

私の服は、十年間ずっと黒かった。理由はひとつで、黒いと、太って見えないから。

「痩せて見える」服しか買ってなかった

服を買うとき、私は必ず鏡の前で横を向いて、「太って見えるかどうか」だけをチェックしてた。

明るい色は避けた。柄物は避けた。身体のラインが出る素材は全部避けて、ダボッとした黒を選ぶ。そうやって、私は「私の体型」を隠す服を買い続けた。

体型を隠すことに成功して、何を失ったか

服で体型を隠すことには、わりと成功してた。黒い服は、私を誰よりも「太ってない人」に見せてくれた。

でも、その代わりに私は、服のことを何も考えなくなってた。

好きな色も、似合う形も、どんな自分になりたいかも。ぜんぶ「痩せて見えるかどうか」の影に消えて、私はただ、黒い服を着た「太ってない人」でいることしか考えてなかった。

店員さんの一言

ある日、服屋の店員さんに、ピンクのシャツを渡された。

似合うと思いますよ

私は反射的に「色が……」と言いかけた。黒じゃないと、太って見えるから。でも店員さんは言った。

色を着るのは、見せるためじゃないんです。自分が「今日はこれ」って決めるためです

で、今はこうしている

今は、黒い服を買うときも、明るい色を買うときも、理由を一つ決めるようにしてる。

「痩せて見えるから」じゃなくて、「今日はこう見えたいから」で選ぶ。

体型は、今も変わりません。でも、服を着る理由が変わった。着る理由が変わると、鏡の前で、隠すために服を着てた自分が、少しだけ消えていく。

色を着るのは、見せるためじゃない。自分が決めるためだった。

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