帰り道 デートの帰り道に読む
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相手の家に、上がった。それ以上、進めなかった

デートの帰り道、「ちょっと上がってかない?」と相手に言われて、私は上がった。ソファに座って、お茶を飲んで、それから先に進めなかった。相手の家で何も起きなかった夜の話。

デートの帰り道、「ちょっと上がってかない?」と相手に言われて、私は上がった。

上がったのは、断れなかったから

解散するはずだった。駅まで歩いて、そこで別れて、帰る。

でも、相手が「駅、こっちじゃなくて、家の近くまで歩こう」と言って、そのあと「ちょっと上がってかない?」と続いた。私は「はい」と答えた。断り方が分からなかったから。

あのときの「はい」は、行きたいという意味じゃなかった。「いいえ」と言ったら、どうなるかが怖くて、反射で出た言葉だった。

ソファで、動けなかった

相手の家は、きれいだった。ソファがあって、コーヒーを淹れてくれて、テレビをつけてくれた。

私はソファに座って、コーヒーを飲んだ。それから先が、どうにもできなかった。 相手は隣に座って、何かを話してたけど、私は頭の中で「どうなるんだろう」「どうすればいいんだろう」と、ぐるぐる回ってた。

手を伸ばせば届く距離に、相手がいた。でも、手を伸ばすための言葉が、私には出なかった。何を話しても、「そろそろ帰ろう」という言葉を、探してた。

帰る、と言った

何分たったか分からない。私は「そろそろ帰ります」と言った。

相手は「うん、気をつけて」と送ってくれた。私は帰り道、ずっと「あのとき、何をすればよかったんだろう」と考えてた。「行きたくなかった」わけじゃない。行きたかったけど、どう進むかが分からなかった。

あとから考えると、あの夜の私は、部屋に上がる前から、ずっと緊張でいっぱいだった。コーヒーを飲むのも、精一杯だった。相手の家に上がるというハードルを越えられなくて、私は「帰ります」という、いちばん安全な言葉に逃げてた。

で、今はこうしている

今は、そうなりそうな夜は、先に「今日は帰る」と決めてから、上がることにしている。

「今日は帰る」と決めた上で行くと、途中で迷わない。 迷ってるのは、進みたい気持ちと、怖さのあいだを揺れてるからだ。帰る日は帰る、と決めておけば、その揺れがなくなる。

相手の家に上がって、何も進めなかった夜。あのとき私は、進むのが怖くて、帰るのが精一杯だった。

進めなかったことは、悪いことじゃない。 でも、進むかどうかを、自分で決めずに「帰ります」と逃げたことは、今でも後悔が残ってる。逃げずに、言葉で決められるようになりたい。

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